2020/04/17
細胞培養用語集
執筆・監修医師 湯田竜司
湯田眼科美容クリニック院長 湯田竜司の「湯田先生の相談室」にようこそ。美容整形をお考えのあなたのお力になれますよう、今までのお客様からのお悩みにできる限りお答えします。参考になれば幸いです。
著者プロフィール
Dispase Ⅱ
Paenibacillus sp. が産生する中性金属 protease である Dispase
ペプチド鎖の中性、非極性アミノ酸のN 末端側を切断する
カゼイン分解法により、1分間に1μgのチロシンを遊離する酵素活性を1PUとする。(PU : Protease Unit)
300,000~360,000PU/g
皮膚片を 400〜1,000 U/mL のDispase に浸漬して冷蔵で 4〜24 時間処理すると,
表皮と真皮を結合する基底膜が選択的に消化され,真皮と表皮が容易に分離できる
清浄な環境下で0.2μmフィルターを用いて濾過滅菌
2~10℃保存、製造後2年間
※溶解後は-20℃以下で凍結保存し、6ヶ月以内に使用。
活性中心にZn2+を持ち、その活性はCa2+により安定化される。
【作用条件】
酵素濃度: 100~2,000PU/ml
溶解液: Ca2+を含む緩衝液、または培地(血清を含んでも良い)
反応時間: 30分~数日間
反応温度: 室温~37℃
反応pH: 6.5~9.0
阻害因子: EDTA, Fe3+, Fe2+, Ni2+, Cu2+, Al3+, Zn2+
●血清中の成分により酵素活性が阻害されることはほとんどなく、血清の有無に関わらず使用可能。
●基底膜を構成するIV型コラーゲンやフィブロネクチンをよく分解し、上皮細胞を組織からシート状に剥離させることが可能。
●トリプシンやコラゲナーゼなどのプロテアーゼと作用が異なり、細胞障害が少なくより穏やかな細胞分散を示す。
●作用条件(酵素濃度、処理時間、温度、pH)が比較的広範囲。
●37℃において安定。細胞種によっては培地に添加することで浮遊培養が可能。
●マイコプラズマの混入なし。
●動物由来原料不使用
表皮と真皮の分離
ヒト皮膚細胞の採取・培養法
Organ Biology VOL.22 NO.1 2015 57
井家益和,畠 賢一郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/22/1/22_57/_pdf
真皮と表皮を分けるには,Paenibacillus sp. が産生する中性金属 protease である Dispase を用いる.
皮膚片を 400〜1,000 U/mL のDispase に浸漬して冷蔵で 4〜24 時間処理すると,
表皮と真皮を結合する基底膜が選択的に消化され,真皮と表皮が容易に分離できる.
表皮の厚さは真皮の 1/15〜1/40 であるため,真皮から薄い表皮が剝がれる感触である.
表皮から keratinocyte と melanocyte
真皮から fibroblast を単離することができる
皮膚には常在菌が存在するため,組織処理の前に 10% povidone iodine に 2〜3 分
もしくは 70%ethanol に 10 数秒皮膚を浸漬する消毒工程が一般的
しかし,汗腺や脂腺の奥深くまで消毒することは困難であるため,培養工程で用いる培地に penicillin や streptomycin,amphotericin Bといった抗生物質を添加することが推奨
抗生物質を添加しない培地を用いて培養しても細菌汚染が発生する確率はそれほど高くない.
むしろ,抗生物質は通常濃度であっても細胞増殖をわずかに抑制するため,その必要性について慎重に判断すべきである.
fibroblast
ヒト皮膚細胞の採取・培養法
Organ Biology VOL.22 NO.1 2015 57
井家益和,畠 賢一郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/22/1/22_57/_pdf
真皮は,基底膜直下から深層に向けて,
乳頭層,乳頭下層,網状層に分かれており,
網状層の方がより線維成分が密な結合組織である.
真皮の細胞成分として代表的な fibroblast は,結合組織内では繊維状に配向している.
Fibroblast は,生理活性物質や細胞間物質を産生しており,損傷組織内でよく増殖する.
ヒト fibroblast は,比較的容易に分離・培養することができる.
増殖因子などを添加しない単純な10%ウシ胎児血清添加培地でも良好に増殖し,継
代や細胞凍結も容易であるため,培養技術の習得に汎用される.
Fibroblast の単離には,組織片(explant)培養法と,細胞分散培養法がある.
組織片培養法は,数 mm 角の真皮小片を培地に沈めて培養する方法で,真皮内部から fibroblast
が遊走して培養面で増殖する.
培地量が多いと組織片が浮遊するため,液量は組織が浸る最低限とする.
真皮組織を静置するために,初期の培地交換回数を減らしたり,カバーガラスで組織を押さえるといった工夫も有用である.
また,残存した表皮が培養面に接すると keratinocyte が増えることもあり,注意が必要である.
組織片培養法では,遊走能を持たない他の細胞の混入が抑えられることや,細胞形態が揃ったき
れいな細胞集団が得られる長所がある.
一方,細胞の遊走が確認されるまで 1 週間以上かかるため,初代培養期間が長く,また真皮組織が十分に培地に浸漬されないことから細菌汚染の危険性が高いといった短所もある.
加えて,本法の細胞培養の成否は fibroblast の遊走能に大きく依存するため,遊走能のすぐれた細胞のみが選択的に培養されている可能性も否定できず,真皮の広範な探索研究には課題を残す.
細胞分散培養法は,真皮の結合組織を collagenase や trypsin で消化し,分散した細胞懸濁液を
培養する方法である.
酵素を用いて直接的に組織消化を行い,これを反復処理することで確実にfibroblast が回収できることが利点である.
一方,採皮部位によっては結合組織が固く消化不良をきたすものがあり,その溶液の粘性が上がるために
操作に難渋することが少なくない.
また,fibroblast 以外にも皮膚付属器由来がまとめて回収されるため,他の細胞や血球,結合組織由来の線維状・塊状の残が混入することが多い.
これらの夾雑物は,培地交換や継代によって次第に除かれるものの,最終的な細胞集団でも,組織片培養法で得た fibroblast より多様な細胞形態となる印象は拭えない.
一般的に,fibroblast は,結合組織から分離した細長い紡錘形の細胞形態によって判断される.
しかし,多くの間葉系細胞も同様の形態を呈することから,判別は容易ではない.市販の抗 fibroblast抗体もその適格性は明らかではなく,collagen やelastin,生理活性物質などの産生を指標としても
判別に限界があることを理解する必要がある.
実際に,fibroblast の形態が紡錘形にみえるのは細胞密度が高い場合であり,コンフルエントでは
典型的な線維層状となる.
細胞密度が低いときは,複数の細胞突起を有した不定形である.
培養経過をタイムラプスで観察すると,fibroblast が無指向性に著しく移動し,いったん,細胞分裂時に静止して球体に変形した後,分裂した細胞はそれぞれ別の方向に遊走する動画が得られる.
これが fibroblast がコロニーを形成せず散在する理由である.
また,fibroblast の遊走は細胞自体が伸展して這うように移動するが,その際に細胞突起の先端
が断裂して培養面に残ることも確認された.
Fibroblast を培養すると数多くの塵状の物体が培養面に観察されるが,血清の澱などの不溶物ではな
く細胞の残端であった.
マウスやラットの fibroblast の場合,長期継代の途中で形質添加によって不死化して株化細胞と
なることが多いが,ヒト fibroblast が自然に不死化することはないといわれる.ヒト fibroblast は,
一定の増殖速度を維持しながら比較的長い期間継代培養を継続することができるが,細胞老化によって増殖は停止する.
Fibroblast の増殖速度は由来個体によって異なり,若齢ドナーでは増殖速度が高い傾向がある.
細胞治療ではヒト fibroblast の歴史は古い.
1997 年には,fibroblast を創傷被覆材 Biobrane®上で培養して凍結した TransCyte®,1998 年には吸収性メッシュの Vicryl®に fibroblast を培養したまま出荷する Dermagraft®が相次いで米国で製品化さ
れ,熱傷や皮膚潰瘍の治療に用いられている.
これらの細胞源は,米国で入手可能な新生児割礼包皮である.日本でも患者本人の皮膚から分離・
培養した fibroblast が,皮膚の潰瘍治療やアンチエイジングを期待して臨床使用されている.
細胞治療では培地に添加するウシ胎児血清が問題とされる場合もあるため,代替として自己血清を用い
たり,動物由来物を完全に排除した完全合成の
無血清培養の開発も進んでいる
Keratinocyte
ヒト皮膚細胞の採取・培養法
Organ Biology VOL.22 NO.1 2015 57
井家益和,畠 賢一郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/22/1/22_57/_pdf
表皮の厚さは平均 0.2 mm であり,基底膜から上に基底層,有棘層,顆粒層および角質層の順に
分化状態の異なる keratinocyte が積層されている.
基底層は細胞 1 層で構成され,keratinocyte 幹細胞とその娘細胞である transit amplifying cell,もしくは common progenitor cell が存在し,細胞増殖の起動力となっている.
基底層で増殖した keratinocyte は上に押し上げられて 5〜10 層の有棘層を形
成し,さらに細胞が扁平化して keratohyalin 顆粒を含む 2〜3 層の顆粒層を形成した後,脱核して
keratin 線維で満たされた強固な多層の角質層となり落屑する.
これらの過程が keratinocyte のturn over である.
したがって,細胞培養においては増殖能がすぐれた基底層の細胞を効率よく回収し,stemness が維持できる培養系が最適といえる.
ケラチノサイトの培養
ヒト keratinocyte の培養には,1970 年代にGreen らが開発した 3T3 細胞を feeder layer とし
て用いる Green 法と,1980 年代に Boyce とHam が開発した MCDB153 を基本とした無血清培地を用いる方法がある.
いずれも,Dispase で真皮から剝離した表皮を用いるより,全層皮膚の方が良好な結果が得られることが多い.
Green 法は,放射線照射や mytomicin C 処理によって増殖能を阻害したマウス胚由来 3T3 細胞をtrypsin で消化した皮膚の細胞懸濁液と共培養することによって,keratinocyte を選択的に増殖さ
せる方法である.
この 3T3 細胞が feeder layer であり,増殖因子や接着分子を供給するとともに,サブコンフルエントの 3T3 細胞が混在することでヒト fibroblast の増殖を抑制する役割を担っている.
Green 法では,insulin,triiodothyronine,choleratoxin,hydrocortisone,EGF および transferrin を増殖因子として添加したウシ胎児血清含有培地を用いる.
Feeder layer の上で keratinocyte が増殖するとの誤解が多いが,keratinocyte は足場依存的に増
殖するため feeder として播種されている 3T3 細胞を押し退けるように培養面に接着して円形のコ
ロニーを形成して増殖する.
増殖したコロニーが結合してコンフルエントに達すると細胞間に強固な desmosome 結合が発達するため,培養面との hemidesmosome 結合を Dispase で消化することによって,1 枚の細胞シートとして剝離できる.
無血清培地によるケラチノサイト培養
無血清培地を用いたヒト keratinocyte の培養では,上皮細胞の特徴として知られるcobblestone(敷石)状に隣接して増殖する.
ケラチノサイトの分化は、カルシウムを含有する培地で培養することで促進可能。
無血清培地における低濃度カルシウムは、ケラチノサイトの角化へ向かう分化誘導を抑制します。
ケラチノサイト用のカルシウム不含培地を使用すれば、カルシウム濃度を変えることも可能。
カルシウムが全く含まれない培地においては、ケラチノサイトは接着も増殖もしません。
良好な接着と生存率を維持するためにも、カルシウム不含培地に対して終濃度0.03mMもしくはそれ以下の濃度でカルシウム添加をされることを推奨。
低カルシウム濃度では、ケラチノサイトの増殖率は遅くなりますが、分化率も低く抑えることが可能。
標準的な培地;KGM™ や KGM™-2 培地は、いずれもカルシウムを 0.15 mM含有。
また KGM-Gold™ 培地においては、 カルシウムを 0.10 mM含有。
無血清培地では,混入する fibroblast の増殖と keratinocyteの分化を抑制する目的で,Ca2+濃度が 0.1 mM以下と低く調整されている.
EDTA 溶液で Ca2+をキレートすると fibroblast が剝離することが知られているように,fibroblast の接着には 2 mM 程度の Ca2+濃度が必要である.
これに対して keratinocyte の接着は Ca2+要求性が高くないため低Ca2+濃度下で選択的に増殖させることができるのである.
また,Ca2+濃度を上げた無血清培地でkeratinocyte を培養すると,小さな細胞が密集したまるいコロニーを形成しながら増殖する顕微鏡像が観察できる.
Green 法に類似したコロニー形状であるが,無血清培地では分化の進行による細胞分裂の停滞によってコンフルエントに達することはない.
無血清培地は,以前は増殖因子としてウシ脳下垂体抽出物を添加する必要があったが,現在では
動物由来物を完全に排除した成分の明らかな無血清培地が開発されており,細胞増殖能も良好であ
る.
しかし,Ca2+濃度が低いため keratinocyte が重層化しないことに加え,細胞間の desmosome も発
達しないため,細胞シートとして扱うことはできない.
無血清培地を用いた培養で剝離可能な細胞シートを形成させるには,十分にコンフルエントに達した後に Ca2+濃度を 1.8 mM に上げるか,もしくは 10%ウシ胎児血清培地に置換すると,細胞間結合が発達する.
しかし,無血清培地で培養した keratinocyte は,Ca2+濃度の上昇によって過度に分化が進行するため,細胞シート内の keratinocyte の増殖能は著しく低い.
両法を比較した際に最も興味深いのは,Green法で用いる培地の Ca2+濃度は 1.6 mM と高く,細
胞が小さく密集した円形のコロニーを形成するにもかかわらず,細胞増殖能が維持され,長期の継
代培養が可能なことである.
これは,小さいコロニーの段階ですでに細胞が重層化しており,基底層に相当する培養面に接した未分化な keratinocyte が増殖・分化して有棘層に移行する垂直方向の turn over が繰り返されているためである.
これを幹細胞が維持されている結果と考えている.
この keratinocyte が増殖と分化の均衡を保ちながらコロニーとして拡大して培養面を覆い尽くす経過は,あたかも生体組織の創傷治癒過程をフラスコ内で再現しているともいえる.
Green法では,keratinocyte と 3T3 細胞との間に,表皮と真皮に類似した相互作用が存在している可能性が示唆される.
Green 法を用いた自家培養表皮を製品化し,2007 年に製造販売承認を受けた.
この製品は,患者自身の皮膚片を原材料として keratinocyte を培養して製造する移植用の細胞シートで
あり,広範囲の重症熱傷に対する新たな治療法を提供している.
製品の開発にあたり,臨床的安全性に考慮して動物由来物を使用しない製造法を採用することも考えたが,stemness の維持や永久的な生着能力による創傷治癒の有効性の観点からGreen 法を採用した.
この製品の培養工程では,マウス由来 3T3-J2 細胞,ウシ胎児血清,ブタ膵臓由来 trypsin を使用しているが,すべて本邦の指針に従った安全性を担保している.
製造で用いる培養手順や培地添加物,血清などの製造元と lotについては,コロニー形成試験や holoclone,meloclone,paraclone といったコロニー形態を評価し,keratinocyte の clonal conversion を最適な培養工程を見出した.
多指(趾)症手術摘出検体からの細胞分離
Organ Biology VOL.23 NO.1 2016 53
佐藤元信・杉原 望・小阪拓男
表皮角化細胞の単離と培養
本稿では,フィーダーを用いない無血清培養を記す.
無血清培地としては,MCDB153 培地をベースとして,増殖因子,ホルモン等を添加した培地
が多く用いられている3).
本稿では,KGM-Gold(Lonza)を用いている.
1. 分離した表皮を,15ml チューブ中で,10mlの 0.25 % ト リ プ シ ン+0.02 % EDTA in Ca,
Mg-free PBS(以下,トリプシン-EDTA と略)にて 37℃,10 分処理する.
2. 1% トリプシンインヒビター(Sigma, typeIS)を 1 ml 加え(トリプシン溶液中での最終濃度,約 0.1%)トリプシンの作用を止める.
3. 激しくピペッティングした後,消化されない表皮(角化層)部分を残して細胞浮遊液を回収
する.
4. 1000rpm,4 ℃にて 3-5 分遠心する.
5. 上清を徹底的に除き,細胞を 1 % FBS を含む KGM-Gold 培地に浮遊する.
6. 再度 1000rpm,4 ℃にて 3 – 5 分遠心する.
7. 1% FBS を含む KGM-Gold 培地に細胞を浮遊する.
8. タイプ I コラーゲンをコートしたディッシュやフラスコへ播種する.播種細胞密度は 1 x
105cells/cm2 程度が目安である.
9. 37℃,5 % CO2 気相下で培養する.
10.播種翌日,遅くとも 2-3 日以内に血清を含まない KGM-Gold 培地に培地交換する.
11.コ ン フ ル エ ン ト に な る 前 に, ト リ プ シン-EDTA(37℃,5 分程度)にて処理,ピペッ
ティングにより剥離し,トリプシンインヒビターでトリプシンの作用を停止する.
1000rpm,4 ℃で 3 分遠心し,ペレットに培地を加え浮遊,さらに 1 回遠心して残余する可能性のあるトリプシンをできるだけ除き,培地に再浮遊,播種する.
12.以下,適宜継代し,培養を継続する.
13.CELLBANKER 2(無血清タイプ,日本全薬工業)を用いて凍結保存する.
凍結皮膚組織を材料とした場合,ディスパーゼ処理によって分離された表皮からは,生存する表
皮角化細胞,メラノサイトはほとんど得られない.
原因は調べていないが,凍結・解凍のダメージによる死滅や,解凍した皮膚組織では,ディスパー
ゼ処理後にこれらの細胞が角化層側ではなく真皮側に付着している可能性が考えられる.
しかし,真皮の基底膜側を擦りとっても細胞はうまく得られていない
抗生物質は,培養初期には gentamycin+amphotericin B mixture(GA-1000,Lonza)を 0.1%容添加,微生物非汚染が確認されたのちは,100μg/ml kanamycin としている.
以下すべての組織の培養について同様である.播種時と,第一回目の継代時には 1 %の FBS を加えておくと細胞の回収と接着がよい.
一方,角化細胞を長期間血清にさらすと分化するので,細胞の接着確認後できるだけ早めに培地交換して血清を除去する.
単離時,継代時のトリプシン処理においては,処理後にトリプシン活性を完全に止めるため,トリプシンインヒビターの使用が必須である.
さらに,継代翌日に培地交換することも推奨される.
培地交換は 1日おきが望ましい.
継代時には過度のトリプシン処理を避けるため,適宜顕鏡しながら,細胞が丸くなる程度の剥離状態になったところで処理を止める.
例えば,ピペッティングなしに細胞が培養器から完全に遊離する程度まで 37℃で長時間処理すると,その後の接着や増殖が非常に悪くなる.
培地添加物のウシ脳下垂体抽出物(bovine pituitaryextract,BPE)は失活が非常に速いように思われる
ので,ストック液として冷蔵保存,用時に培地に添加する.
PBS
http://lab-cookbook.blogspot.com/2017/11/pbs.html
phosphate-buffered saline
Ca,Mg含有、不含有以外にも2種類(PBSとDulbecco’s PBS)が存在
10X PBS
試薬 最終濃度[mM] [g/L]
NaCl 1370 80
Na2HPO4 100 14.4
KCl 27 2
KH2PO4 18 2.4
Milli-Q水で1Lにメスアップ、オートクレーブ滅菌
※ミリQ水とは超純水装置ミリQ(Milli-Q)により精製された超純水
使用時に1X濃度に希釈
カルシウム、マグネシウム含有PBS
濾過滅菌した1M CaCl2、1M MgCl2をストックし、
終濃度0.9mM CaCl2、0.5mM MgCl2になるよう添加
一般にPBSとして主流となっている組成
(D-PBSと標記されずPBSとしている場合も多い)PBS(-)DPBS
Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline
10X Dulbecco’s PBS
試薬 最終濃度[mM] [g/L]
NaCl 1370 80
Na2HPO4 81 11.5
KCl 27 2
KH2PO4 14.7 2
Milli-Q水で1Lにメスアップ、オートクレーブ滅菌
HBSS
Hanks‘ Balanced Salt Solution
D-PBSに炭酸水素ナトリウム及びグルコースが加わっている
組織、器官、細胞などの代謝機能を維持しながら輸送したり、処理する際には最も基本的な平衡塩溶液
HBSS(-)カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないもの
TrypLE:トリプル
接着性の哺乳類細胞株の解離
従来のトリプシンに比べて、細胞の解離をマイルドに行える。
従来のプロトコールで使用しているトリプシンを、直接置き換えて使用可能
● 動物由来成分不含の組換えプロテアーゼ
トリプシンはブタ
● 細胞の特性を保持し、生存率を維持したままマイルドな細胞解離が可能
トリプシンよりマイルド
●トリプシンインヒビターによる不活性化が不要
● 室温でも24カ月間安定
トリプシンは冷凍保存(-5度~-20℃)
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