2018/08/25
【眼科ドクター湯田が教える】目の病気、簡単解説
執筆・監修医師 湯田竜司
湯田眼科美容クリニック院長 湯田竜司の「湯田先生の相談室」にようこそ。美容整形をお考えのあなたのお力になれますよう、今までのお客様からのお悩みにできる限りお答えします。参考になれば幸いです。
著者プロフィール
A.目の病気、簡単解説
I.目の中の血管について
目の中の血管は2つの系統の血管があります。
網膜血管と眼球中膜の血管の2つです。
①網膜血管は網膜中心動静脈の枝です。
②眼球中膜の血管系は、脈絡膜動脈・虹彩動脈・毛様体小枝ならびにそれらに所属する諸静脈・渦静脈・毛様体静脈からなります。
II.網膜、中心窩とは
文字を読むときのことを想像して下さい。
目で見える範囲(視野といいます)の中央部分以外は、文字がみえにくいと思います。
これには理由があります。
目の奥のスクリーン(網膜)に移った映像を私たちは、脳に送って見ているのですが
文字を認識できるほどの性能は、網膜のほんの一部なのです。
そこだけ、とても緻密なスクリーンになっています。
ここの部位を
中心窩と言います。
III.黄斑とは
目の奥は網膜というスクリーンがあります。
網膜は中心が一番緻密なスクリーンになっています。
それ以外は画像が粗いです。
その緻密なところを
黄斑といいます。
黄斑の中央を
中心窩といい、もっとも解像度が良いスクリーンです。
B.目の検査
I.goldmann氏圧平眼圧計による測定法
眼圧を測る際によく使用するgoldmann氏圧平眼圧計による測定法について解説致します。
①ベノキシールを点眼。
②フローレス試験紙のフルオレスチン塗布面にベノキシールを1滴滴下。
③結膜に試験紙を軽くあてて、課膜表面にフルオレスチンを均等に広げる。
④圧平プリズムの目盛りの0度または180度に支持枠の白腺を一致させる。プリズムの長軸を顕微鏡の軸と一致させる。
⑤眼圧計の右側加担にある側圧ドラムの目盛りを1(10mmHgに相当)にセットする。
⑥顕微鏡の倍率は弱拡大・青色フィルター挿入・細隙幅を最大限に開放して明るさを最強・光源は顕微鏡の軸より60度左側にセットしてプリズムの側面を照射する
⑦光源の反対側から肉眼で観察しながら、圧平プリズムを角膜に静かに接触させると、その瞬間に角膜輪部がパァーっと急に明るくなる。この時、顕微鏡をみると、上下左右に分離した半円形・緑色のリングが視野に現れる。
⑧この半円孤がもっとも鮮明にみえるようにノブを僅か前に倒し、上下2つの孤が視野の中央に同じ大きさにあらわれるように、細隙灯顕微鏡を上下左右に微調節する。
⑨側圧ドラムを静かに回転して、左側・上半円孤の内側と右側の内側を一致させ、静かに眼圧計を角膜から離して側圧ドラムの目盛りをよみ、その10倍が眼圧値(mmHg)である。
脈動するときは中間値をとる。
C.目の病気
I.乱視とは
乱視とは・・・・
乱視とは、目のレンズの働きをする部分がゆがんでいるため焦点が合わない状態を言います。
レンズが歪むと光は1点に集まりません。
乱視の原因には、水晶体が原因の場合もありますが、多くの場合角膜が原因となっています。
正常な人では、角膜は横方向も縦方向もほぼ同じカーブをしていますが、乱視の人ではカーブの度合いが、横方向と縦方向で異なります。
そのために横方向と縦方向とで屈折力に差が生じ、眼底にはっきりとした像を結ぶことができないのです。
一般的に乱視は余り変化することはなく、軽い場合には近視と同じようにメガネで矯正出来るので、得に心配する必要は有りません。
現在、乱視用のソフトコンタクトレンズも販売されているので、ハードコンタクトレンズが苦手な人でも、無理なく矯正する事が可能です。
乱視の種類
1)不正乱視
角膜の表面が凸凹なものを言います。
角膜疾患が原因で、後天的に不正乱視となる場合もあります。
不正乱視の場合には、乱視矯正で使用される円柱レンズでは矯正することが出来ないため、コンタクトレンズで矯正しますが、完全に矯正出来ない場合もあります。
2)正乱視
角膜の曲がり具合が、一方向で最も強く(強主径線)、これに直行(90°方向)する方向が最も弱く(弱主径線)、両線の間がなだらかに変化しているものを、正乱視と言います。
a.直乱視 正乱視の強主径線が垂直方向のものを直乱視と言います。
正乱視の90%程度がこの、直乱視が占めます。
b.倒乱視 正乱視の強主径線が水平方向のものを倒乱視といいます。
c.斜乱視 まれに強主径線が斜め方向の場合がありますが、これを斜乱視と言います。
屈折状態による分類
1)単乱視
主径線の一方が正視である乱視。
他方が近視の場合には、近視性単乱視。
遠視の場合には、遠視性単乱視と言います。
2)複乱視
主径線のいずれもが近視または遠視である場合、近視であれば、近視性複乱視、遠視であれば、遠視性複乱視と言います。
一般には、単乱視、複乱視共に、それぞれ、近乱視、遠乱視と言われています。
3)雑性(混合)乱視
強主径線が近視、弱主径線が遠視の場合を、雑性(混合)乱視と言います。
乱視の症状
年齢が若く軽度の乱視の場合には殆ど症状は有りません。しかし、軽度の乱視であっても年齢が進むにつれて症状が現れてくることもあります。
視力障害:遠くも、近くも見えにくくなる。
単眼複視:片眼で見ても、二重に見えることがある。
眼精疲労:調節の努力のために眼が疲れる。
その他、夜間に見えにくくなる、電光掲示板の文字がにじんで見えるなどの症状があります。
II.ものもらいとは
ものもらいは、まぶたがおばけのようにはれ上がってしまう病気です。
専門的には、麦粒腫と霰粒腫に区別されます。
麦粒腫は、ばい菌が入り、腫れあがった状態です。
霰粒腫は、脂の腺がつまり、炎症が起きます。
III.白内障とは
白内障は、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気です。
水晶体はカメラのレンズのようなものです。
外からの光を集めてピントを合わせるはたらきを持っています。
通常は透明なのですが、白く濁ってしまうと、集めた光がうまく眼底に届かなくなります。
すると
- 視界が全体的にかすむ
- 視力の低下する
- 光をまぶしく感じる
- 暗いときと明るいときで見え方が違う
などの症状がでてきてしまいます。
日常生活に支障がでてきたら手術をするのが良いでしょう。
ただし、人工的な眼内レンズにピント調節機能はないため、手術後もメガネなどによる視力の矯正が必要な場合がありますのでご注意ください。
白内障術後は点眼液が必要です。
具体的には
- ガチフロ点眼液(抗菌薬)
- リノロサール点眼液(ステロイド点眼液)を術後1ヶ月
- ジクロフェナック点眼液(Nsaids)を術後3ヶ月点眼が必要です
術後の注意点
3ヶ月はメガネをつくるのはやめておきましょう。
IV.PCO(後発白内障)とは
PCOとはposterior capsule opacificationの略語です。
後発白内障のことです。
白内障の手術後、眼内レンズを固定している白内障の袋が濁ってくることがあります。
これを後発白内障と言います。
術後2ヶ月越えていればレーザー治療をします。
V.黄斑円孔とは
黄斑にあながあいてしまう病気です。
黄斑円孔の初期症状は、視力低下と物がゆがみで見えます。
進行すると、見にくい部分が増え、さらに視力が低下します。
見ようとする中心以外の周辺は問題ありません。
痛みはないです。
両眼に黄斑円孔がおこることもまれにあります。
治療は手術が必要になります。
術後はうつむきにならなければなりません。
期間は3日〜1週間が目安です。
自然にあなが閉鎖することもあります。
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VI.網膜前膜(ERM)とは
ERMとはepiretinal membraneの略語です。
網膜前膜(黄斑上膜)のことです。
網膜の上に、加齢とともに自然に剥がれるうすい膜(残存硝子体皮質)が、そのまま部分的に残る場合があります。
残ったうすい膜が時間の経過とともに収縮を始めます。
その際、うすい膜が付着している網膜にゆがみを起こします。
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VII.網膜剥離には2種類あり
網膜剥離には裂孔のあるタイプとないのとあります。
今回は裂孔があるタイプのお話を致します。
網膜裂孔には二つの形があります。
裂目が馬の蹄のような形の馬蹄型のタイプ
網膜が萎縮してそこに針でさした穴のような形の円孔型の二つの大きなタイプ
1.馬蹄形裂孔
老化が進むと後部硝子体剥離ということがおこります。
これが問題なくきれいに剥離していけばいいのですが、その途中で、網膜を硝子体が引っ張って網膜に穴を開けてしまう場合があります。
するとその穴から、硝子体の一部が老化により液化して、水のようになって網膜の裏側に入り込んで、網膜を浮かし、その働きを駄目にしてしまうと、馬蹄形網膜剥離が発生します。
2.萎縮円孔
網膜の周辺に薄いところが出来る、これを格子状変性といいますが、それがところどころにできて、中でも薄いところに穴が開いて、その穴を通して、水が裏側に回って網膜が剥がれてくるタイプ
若い人に多いです。
VIII.網膜裂孔とは
網膜裂孔とは、網膜にさけた穴があくことです。
目の中は硝子体というゼリーで満たされていますが、年を取ると徐々に液体に代わってきます。
ゼリーのときは膨らんでいますが、液体になると体積が縮んでしまいます。
そのときに網膜とくっついているところは、網膜が引っ張られて、裂孔ができてしまいます。
また強い近視がある人も、目の長さが普通の方より長いため、網膜がうすく伸ばされており、裂孔が生じることがあります。
症状としては飛蚊症や光視症があります。
飛蚊症は蚊が飛んでいるように見えます。
光視症は光がみえます。
治療はレーザー光凝固が主になります。
IX.裂孔原性網膜剥離(RRD)とは
網膜剥離の中で最も多くみられます。
網膜に孔(網膜裂孔・網膜円孔)が開き、目の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込んでしまい発生します。
はじめのうちは剥離した網膜の範囲は小さく、時間とともにだんだんこの範囲が拡大するというような経過をたどりますが、孔が大きいと一気に進みます。
剥離が進行すればすべての網膜が剥がれてしまいます。網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。
剥がれた網膜は光の刺激を脳に伝えることができません。
また、剥がれた網膜には栄養が十分行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと徐々に網膜の働きが低下してしまいます。
そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。
X.嚢胞様黄斑浮腫(CME)とは
CMEとはcystoid macular edemaの略語です。
白内障手術の術後早期に起こる網膜のむくみ(腫れ)です。
糖尿病網膜症を有する場合に多いです。
XI.中心性漿液性網脈絡膜症とは
黄斑に網膜剥離がおきる病気です。
自然と治ることも多いです。
XII.SRD: serous retinal detachment; 漿液性網膜剥離とは
中心性漿液性網脈絡膜症における主症状です。
XIII.硝子体出血(VH)とは
VHとはvitreous hemorrhageの略で、硝子体出血のことです。
硝子体中に出血がたまると、光が網膜に届かなくなり見えなくなります。
最初は突然黒い影が見えるようになり(飛蚊症)、進行すると視界全体がかすんできます。
治療は 手術になります。
硝子体手術では、血が混ざった硝子体を切除します。
必要であれば原因疾患を治療して、再出血を予防します。
原因疾患の治療には、光凝固、増殖膜除去などを行い、必要に応じて空気やSF6ガスやC3F8ガスやシリコンオイルを眼内に注入します。
ガスやシリコンオイルを注入した場合には、術後うつ伏せの姿勢を保つ必要があります。
うつ伏せ期間は注入した物質や原因疾患によって異なります。
空気、ガス、シリコンオイルを注入せずに終了した場合は、うつ伏せの必要はありません。
XIV.星状硝子体とは
星状硝子体症とは、目の中にカルシウムなどがたまる病気です。
それ自体はほぼ無害です。
XV.緑内障(glaucoma)とは
緑内症とは、目の神経(視神経)障害によって見える範囲がせまくなってくる病気です。
緑内障には2つのタイプがあります。
目の中の圧力(眼圧)が高いタイプと、圧力が正常のタイプです。
40歳以上の日本人には、20人に1人の割合で緑内障の患者さんがいる、とても多い病気です。
失明原因の第1位です。
目の圧力(眼圧)を下げると視神経を保護できます。
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1.前視野緑内障とは
preperimetric glaucomaとは 前視野緑内障のことです。
通常の視野検査でまだ視野欠損を認めない状態の緑内症のことです。
緑内障患者様において視野障害が現れた時点では、すでに5〜6割以上の視神経障害を受けている事が分かってきました。
視野異常が出る前の前視野緑内障から点眼治療を開始した方が、その患者さんの人生の生涯の視機能の質を維持する事が出来ると考えられています。
2.NFLD(視神経線維層欠損)とは
nerve fiber layer defect(NFLD)の略語です。
NFLDは、緑内障の方の眼底所見として見られます。
視神経乳頭から扇状に広がっている線維(網膜神経線維層)に欠損が起こると周りの網膜の色と比べて少し暗い色になります。
3.NTG: normal-tension glaucoma; 正常眼圧緑内障とは
眼圧が正常範囲であるにもかかわらず、緑内障になっている病気です。
「正常眼圧緑内障」の患者さんが過半数を占めていることが判明しました。
XVI.CNV(脈絡膜新生血管)とは
CNVとは脈絡膜新生血管のことです。
CNVは蛍光眼底造影検査の所見に基づきClassic CNVとOccult CNVに分けられます。
造影検査の早い段階から、明らかなCNVが描出されるタイプをClassic、そうでないものをOccultと呼んでいます。
実際のCNVは同一患者さんに両者が混在していることも多いです。
病変の50%以上がClassic CNVであればPredominantly classic CNV
Classic CNVが病変の50%未満ならばMinimally classic CNV
まったくClassic CNVがみられなければOccult with no classic CNVと分類されます。
XVII.硝子体混濁とは
硝子体混濁とは硝子体がにごっている状態です。
正常な硝子体は無色・透明で生卵の白身に似た状態の組織ですが、この部分が何らかの原因で混濁(濁って)している状態が「硝子体混濁」です。
硝子体混濁(出血)は自然経過で吸収されることもありますが、再発を繰り返す事が多く、再発を繰り返しているうちに自然吸収しにくくなります。
また、長期間、硝子体出血があると、血液の鉄分で網膜機能が低下し、出血が吸収してもあまり視力が改善しないことがあります。
XVIII.BRVO(網膜静脈分枝閉塞症)とは
BRVOとはbranch RVO(retinal vein occlusion)の略で、網膜静脈分枝閉塞症のことです。
網膜動静脈交叉部で、動脈による静脈圧排によって血がつまり
網膜静脈が閉塞すると考えられています。
静脈閉塞により黄斑浮腫を生じます。
黄斑浮腫により視力低下をもたらします。
静脈が閉塞すると血管透過性亢進作用をもつ血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の眼内濃度が上昇し、黄斑浮腫を生じます。
抗VEGF療法が効果的ですが、8割ほどの方は2~3ヶ月後に再発がみられ、反復治療が必要になります。
浮腫が強くなると漿液性網膜剥離を合併するようになります。
新生血管からの硝子体出血の発症リスクが高くなります。
XIX.涙液層破壊時間(BUT)とは
BUTはBreak Up Timeの略語です。
この検査は、10秒間まばたきをしないで、目の表面の涙の状態を観察します。
まばたき直後は、涙の膜が均一に角膜表面を覆っています。
時間がたつと、涙の膜が一部壊れます。
すると角膜が露出する部分ができます。
これが起こるまでの時間が涙液層破壊時間(BUT)です。
正常なBUTは10秒以上で、これが5秒以下になると涙の安定性に異常があると判断します。
XX点状表層角膜症(てんじょうひょうそうかくまくしょう)SPK(superficial punctate keratopathy)とは
角膜の表面に傷がたくさんついている状態です。
フルオロセインで染めると分かりやすいです。
XXI.瞼裂斑炎(けんれつはんえん)とは
白目の一部がふくらんで黄色くなっているところを瞼裂斑といいます。
たんぱく変性と脂肪沈着が原因です。
ここに炎症がおきたものが瞼裂斑炎(けんれつはんえん)です。
充血や痛み、目のゴロゴロが生じます。
原因は、紫外線、潮風、コンタクトレンズなどの長期刺激です。
対策としては紫外線予防のサングラス、ハードコンタクトなどの刺激は避けることです。
治療は抗アレルギー点眼薬、Nsaids点眼液、ステロイド点眼液を使用します。
XXII.フリクテン性結膜炎
フリクテンとは水泡のことです。
角膜(黒目)や結膜(白目)に水泡が生じます。
水胞の近くが充血し、異物感が生じ、だんだん痛くなります。
いろいろな菌に対するアレルギー反応と考えられています。
1~2週間で自然治癒することもありますが、ステロイド薬を点眼すると非常に効果的です。
そうすると、普通は数日で症状が治まり充血と痛みがとれます。
点眼の目安は2週間くらいです。
XXIII.汎網膜光凝固(PRP: pan-retinal photocoagulation)とは
網膜を広範囲に光凝固することです。
網膜を一度に広範囲凝固すると刺激が強いので、数回に分けて光照射を行います。
XXIV.増殖性硝子体網膜症(proliferative vitreoretinopathy:PVR)とは
網膜剥離を長期間放置していた場合や、眼内の炎症が強い症例、手術後の再剥離などでは、増殖硝子体網膜症という非常に難治な病態になることがあります。
長い間、網膜に円孔、裂孔が開いている事により、正常ならば決して混ざり合うことのない硝子体側の成分と網膜の外側にある成分とが円孔、裂孔を通して自由に交通します。
そのために、本来は卵の白身のような状態の硝子体に線維性の成分が増殖して網膜に癒着し、網膜を牽引して増殖性硝子体網膜症と呼ばれる特殊な網膜剥離になります。
網膜表面にある硝子体というゼリー状の物質を足場にして増殖膜が形成され、それが収縮すると網膜にシワができ、網膜の再接着が困難となります。
通常の網膜剥離に比べると、手術成績は悪くなります。
手術は硝子体手術を行います。
XXV.PEA: phacoemulsification and aspiration; 超音波水晶体乳化吸引術とは
白内障手術の術式です。
XXVI.上強膜炎とは
強膜の表層は血管に富むまばらな結合組織線維で覆われていますが、この層に炎症を起こした状態が上強膜炎です。
強膜(眼を覆う白く丈夫な線維性の組織)と結膜(まぶたの裏側と白眼部分を覆う膜)の間にある組織の炎症です。
症状は結膜の充血、浮腫、ときには結節状に隆起することもあります。
上強膜炎では強膜(しろめ)の表面に比較的限局した充血を認め、症状としては熱感、異物感程度で疼痛はありません。
強膜炎の場合は、知覚神経が豊富な強膜に炎症がおこるため疼痛を伴うことが多くみられます。
上強膜炎の場合は無治療でも数週間で改善することもありますが、基本的には副腎皮質ステロイド薬の点眼が治療の中心となります。
強膜炎の場合は、膠原病や全身感染症などの原疾患がみつかれば原疾患を治療します。
強膜炎に対する治療としてはステロイド点眼でまず様子をみますが、効果がなければステロイドの局所または全身投与を行います。
XXVII.虹彩炎とは
前部ぶどう膜炎の代表的なもので、虹彩が炎症を起こし、腫れたり充血したりする病気をいいます。
感染によるものと免疫反応によるものの2つがあり、これらは原因ではなく炎症を起こしている部位につけられた病名です。
症状は、球結膜(白目)の充血、羞明、流涙、眼痛などが現れ、視力低下を招くこともあります。
細隙灯顕微鏡で角膜と水晶体の間の前房水に、炎症による混濁が存在していないかどうかを見ます。
それと併行して原因疾患が何かを知るために血液検査、胸部X線検査なども行います。
炎症が虹彩毛様体に限られているときは、それを抑えるための治療薬として副腎皮質ステロイド薬の点眼がなされます。
炎症が強いときは副腎皮質ステロイドの結膜下局所注射、内服も試みられます。
また、虹彩と水晶体が癒着しないように散瞳薬の点眼も行われます。
放っておくと、虹彩と水晶体が癒着して緑内障の原因となることもあるので注意が必要です。
XXVIII.流行性角結膜炎(EKC:epidemic keratoconjunctivitis)とは
アデノウイルスによる角結膜炎です。
通常は、8月を中心とした夏期に流行します。
ただし、アデノウイルスは1年中活動しており、夏以外にも流行することがあります。
主な症状
両目に結膜炎の症状(充血、流涙、目やに、まぶたの裏側に小さなぶつぶつ、まぶたの腫れなど)が強くあらわれますが、咽頭結膜熱(プール熱)のような発熱やのどの痛みはほとんどありません。
結膜炎の症状は2~3週間で治まりますが、角膜にまで炎症が及んで、角膜に点状の濁りを生じ、見えにくくなることがあります。
この濁りは、数ヶ月から1年にも及ぶことがあります。
感染力が大変強く流行性であること、また、結膜(白目)の炎症に加え、角膜(黒目)にも病変を認めることがあるため、「流行性角結膜炎」と呼ばれています。
潜伏期間は8~14日間です。
好発年齢
小児から老人まで幅広い年齢層で発症します。
感染経路
手指やタオルなどの物品を介した接触感染によって感染します。患者がウイルスに感染した眼を手でこすると、このとき手に大量のウイルスが付着します。
その手で触れた箇所にウイルスが付着し、そこを他の人が触れ、無意識に目や口に触れるといった経路で感染が容易に成立します。
予防方法
アデノウイルスは感染力が非常に強く、手指を介して感染が広まるので、手洗い・手指消毒や身の回りの消毒を行うことが大切です。
なお、症状が治まった後も、2週間程度は、ウイルスを排出し続けることがあります。
このため、患者からの二次感染にも注意が必要です。
流行時期や家族が感染した場合、できるだけ密接な接触は避け、こまめに手洗い・手指消毒を行いましょう。
タオルや洗面器などの共用は避けましょう。
ドアノブや手すり、おもちゃなどは、できるだけこまめに消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)で消毒しましょう。
患者が目やにや涙を拭き取る場合は、ティッシュペーパーや清浄綿を使い、眼を直接手で触れないように気をつけましょう。
消毒剤に対する抵抗性
アデノウイルスは、色々な消毒剤に対して比較的高い抵抗性を持つウイルスです。
有効な消毒剤としては、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムが挙げられます。
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XXIX.後部硝子体剥離とは
硝子体は、年を取るにしたがい、たるみが現れます。
まず、硝子体の成分の一つであるヒアルロン酸が加齢による変化から十分に水分を保持できなくなり、硝子体の中に液化した部分(液化腔)を形成します。
一方、もう一つの成分であるコラーゲン線維の分子同士の配列が乱れはじめ、硝子体を形作る網状構造が収縮してきます。
こうして、水分が外にはじかれて水とコラーゲン線維が分離し、カサカサした状態となります(硝子体の変性)。
正常では硝子体は網膜と接していますが、硝子体の変性が進むと、網膜から剥がれます。
眼球の奥で硝子体が網膜から剥がれた状態を後部硝子体剥離といいます。
XXX.エタンブトール視神経症とは
抗結核薬のエタンブトール内服による視神経症です。
特効薬は亜鉛です。
XXXI.角膜ジストロフィーとは
白い不透明な無機物が角膜に沈着して両目の角膜が白濁する遺伝性の病気です。
左右の目の同じ位置に、対称的に白濁点が現れます。
角膜の混濁が部分的で軽度であればまったく無症状ですが、年齢とともに視力の低下やまぶしさを訴えるようになります。
視力低下が強く、また角膜の上皮の接着が不良な場合、再発性角膜びらんを起こし、眼痛を生じることがあります。
かなり若いころから、アミロイドという物質が角膜の表面近くに沈着して表面がでこぼこになり、視力障害やまぶしさが強く、再発性角膜びらんが生じることもあります。
治療としては、レーザーを使用して角膜の濁っている部分を削る方法や、角膜移植が選択されます。
角膜ジストロフィーでのレーザーや角膜移植の成績は一般に良好ですが、原因が体質によるものですので、治療を行っても再発してくる可能性があります。
XXXII.老人環とは
1.どんな状態??
黒目の周辺が白くにごってくるものです。
2.症状は?
通常は、角膜の上方や下方の周辺部から濁りが出現し、次第に広がり、1周ぐるっと濁りがつながってしまいます。
濁りは角膜の周辺部のみに出現し、視界にかかる中心部にまで広がることはないため、視力や見え方には影響はしません。
また一番外側は透明です。
3.原因は?
年をとると、血管や血流に変化が起こり、血管から漏れ出した脂質が、透明なはずの角膜内に貯留してしまいます。
そうすると白く濁って見えるようになります。
4.治療は?
残念ですが治療法はいまのところありません。
XXXIII.結膜下出血とは
1.どんな病気??
結膜下の血管が出血したものです。
2.症状は?
白目部分が赤く染まります。
多少、目がごろごろしますが、痛みなどはありません。
眼球内部に血液が入ることはなく視力の低下の心配もありません。
3.原因は?
いろいろな原因が考えられます。
くしゃみ・せき、過飲酒、月経、水中メガネの絞め過ぎなどなど。
4.治療は?
自然に吸収されますので、ほとんどの場合心配はいりません。
1~2週間ほどで自然に吸収されることが多いです。
出血が強いものでは2~3カ月ぐらいかかることもあります。
XXXIV.六フッ化硫黄(SF6)とは
硝子体手術のときに使われるガスのことです。]]>